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 私には、気になる事がひとつある。

 私の家の窓からは、向かいの棟がよく見えた。
 その中程のベランダに、いつも少年が座っている。
「彼」が真実、少年なのかどうか、私には知る由も無い。
 膝を抱えるようにして座る、その様が少年だと思わせる、それだけだ。
「彼」はいつも、夜が更けてからそこに現れ、座り込む。
 何度も見かけるうち、私は「彼」が、電話をしているのだと気がついた。

 少年が、
 夜更けに、
 ベランダで、
 電話をかけている。

 それを午前四時過ぎにも見かけるようになると、私の疑問も度を増す。
(そんな時間に私が何をしていたかというのは、この際、問題ではないのだ)
「彼」は一体、こんな時間に誰と電話しているのだろう。
 そもそも、何故ベランダで話さねばならないのだろう。
 遠目には子機のように見えたそれは、案外、携帯電話だったりするだろうか。
 電波が悪いから、ベランダで?
 ありそうな話だが、こんな時間なのは些か不自然。

 ……まぁ、いいか。
 確かに変な話かも知れないが、私には関係のない事だ。
 詮索したところで答えは出ない。気にするのは止そう。
 そう、忘れてしまえば大したことのない話ではないか。

知らずに憎まれるのと、知らずに愛されるのと。どちらが怖い?

 ツー
「ねぇ、今日もこっちを見ていたね」
 ツー
「僕に気がついているんでしょう?」
 ツー
「早く、話がしてみたいな」
 ツー
「あ、もう寝るんだね」
 ツー
「今日も一日、お疲れ様」
 ――ピッ

2002.04.26 Hazuki K.

Graphics:Little Eden

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