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「日本語、ってか、ヤマトコトバってキレイだよね」
 唐突に何を言い出すのかと思って顔を上げれば、発言者は遠い明後日の視線。
「何て言うかな、『美しい』って言葉からして美しいって言うか。
 そもそも『言葉』自体が『言の葉』でしょ? いいよねぇ」
 ……いや、何がどう良いのかさっぱり。
「『I love you』より、絶対『愛してる』の方がいいしね」
 その『絶対』の根拠は?
「ああ……でも。僕としては、『好き』の方がいいな。
 『好きです』とか『好きだ』とか囁かれたら、ちょっとときめくねー」
 何処のオトメだ、それは。
「ね、ちょっと言ってみてよ」
 ……え?
「僕、前から君の声っていいなぁって思ってたんだ。言ってみるだけならいいでしょ」
 だからって……こら、眼鏡を引っ張るな!
「邪魔なんだもんさぁ」
 無いと見えないんだが。
「見えないからいいじゃん」
 ……あ、そ。

 冷たい夏、寒い夏。
 息がかかるくらいに近づいたって、ちっとも熱くない。
 ……なったらシャレにならないんだろうけれど。

「……好きだ」

「――って、お前ら、何やってんの?」
「あ、史孝フミタカおっそーい。何処までジュース買いに行ってたんだよ」
「だから、そっちこそ何やってたんだよ」
幸隆ユキタカが宿題サボろうとしてるだけ」
「なんだ、バレてたの?
 だって、英語って呪文みたいでさっぱりなんだもんさぁ」
「オレの古典とトレードするか?」
「それより晃一コウイチのがいいー。見せてよ、終わったんでしょ?」
「駄目だ。自分でやれ」
「けち。好きだって言ってくれたクセに」
 それとこれは別。
 いや、むしろ。
 好きだからこそ自力でやれと言いたい、俺は。

2003.08.18 Onino featuring Hazuki

Background:HONEY CAFE

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