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私の女王様
Earthly paradise -2-


「今日、アルヴィス卿に会った」
「あの方に? どうして」
「今後の相談をしに」
「今後……?」
「そう、今後」
「勿体ぶった言い回し、しないでよ。なに? 何を話に行ったって言うの」
「つまり、要するにだな、そろそろあの人には第一線を退いて貰おうと」
「え?」
「あの人はアグストリアを欲しいようだが、あそこは駄目だな。ただでさえ要らん勢力争いが、泥沼になっている。手を出すのは愚かの極みだ」
「ちょっと待って」
「今、この時期に力を必要としているのは、やはりトラキアだろう。つけいる隙も、つけいってあまりあるだけの稔りもある。アルヴィス卿の治世と影響力を揺るぎないものとして見せるには、格好の場――」
「待ちなさいってば! なに? 何の相談?」
「元々、アルヴィス卿は粛正を考えているようだったから。生贄の羊はいつ煮るのかと、そう」
「……どういう風の吹き回し? お義父さま第一のあんたが」
「酷い言われようだな。素直に言えばいいだろう? 陰に隠れてばかりだと」
「なにもそこまで言う必要はないでしょ。自分を卑下しても面白くないし」
「事実は事実。客観的な事実として受け止める」
「まぁ、それはいいわよ。
 でも本当にどうしたって言うの? らしくない」
「らしくない、か」
「全然」
「まだ少し間があるが、私も父親になる。生まれてくる子供と君を守る力くらい、必要だろうと思ったんだ」
「……なに言ってるのよ」

 ぺち。
 叩かれた頬に滑る、一筋の紅。
「………」
「……あ」

「ヒルダ! あれほど言っただろう! 爪を塗っている間は動くな!」
「な、何よ、たかが爪の一枚や二枚」
「十枚綺麗に塗ってこその爪じゃないか」
「別に塗らなくたっていいのに」
「いいわけがあるか。己の妻を最も美しく保つのは、夫の義務だ」
「そんな義務、嫁いで初めて聞いたわよ。大体、綺麗にするだけなら付け爪で充分じゃないの」
「あんな紛い物の何処に美がある。いいからじっとして」
「……いちいち削り直ししないでいいってば。上から塗ってよ。剥げただけでしょ」
「馬鹿を言うな。そんないい加減な塗り方は出来ない。斑になったり色が変わったりしたら、不様じゃないか」
「そんなの、気をつけて見ている人なんて居やしないわよ」
「そういう問題じゃない。これは私の矜持の問題だ」
「……もう、いいからやめてってば」
「やめない。
 ほら、出来た。見ろ、綺麗じゃないか。やっぱりヒルダには、この色が一番似合う」

 そう言って笑うと、いやに無邪気に見えたから。
 馬鹿な男だと思ったし、弱い男は嫌いだったけど、だけど。

「それが乾くまでの間に、髪も見せてくれ。いい香油が手に入ったんだ」
「……仕方ないわね」

 まぁ、こういうのも幸せだと思った。


update:2003.02.14/written by Onino Misumi

Background:Angelic

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