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君の待つ空に
The sky remind me of you


 目の前が真っ青になった。

 行きなさい、と
 あなたは言った。


 グラン歴七五八年。
 シグルドにとっては不本意極まりない結果だった。一年と区切ったとは言え、アグストリアの王都に駐留とは! 親友の窮地を救うための行軍は、その親友の故郷を苦しめる結果になったのである。シグルドでなくとも、胸の痛い話であった。
 グランベルの役人は我が物顔で街を歩き、アグストリアの民の不満は募る一方。シグルドの人柄を知る者は多く、彼に希望を抱いているのだが……やはり自国の王に戻って貰いたい、というのは当然の欲求であったろう。否、民の望みはアグストリア王シャガールではない。ノディオン王エルトシャンの帰還である。
 その兄王に請われてシグルドの元に留まっているラケシスは、複雑な心境この上ない。表面上、シグルド率いるグランベル軍は侵略者である。しかし彼らは自分を救いに来てくれた人達であり、今もそうなのである。途中経過、及び関係者の心情と、結果はあまりに大きく隔たっていた。
 これを裏づける事実として。ラケシスはシグルドの軍の中では、微妙な立場にある。形式上は、ノディオンの姫であるが故に人質として軍にいるのだが、実際はエルトシャンが頼れる唯一の『味方』の元に身を寄せているのである。
 シグルド達が故郷を離れ遠くヴェルダンまで出征したのは、エーディン公女の誘拐が原因であったという。彼らは義憤に駆られて軍を発したが、結果はグランベルの領地拡大という、非常に政治的な次元に片づけられてしまった。今回の件も、ラケシスがシグルドに助けを求めたところに端を発する。
 それが不吉な予感を漂わせる。一刻も早く、兄と共にノディオンに帰りたいと思うのも、無理はなかった。

一 アグスティ

「どうかしましたか?」
 若々しい、ともすれば幼く聞こえる声に、ラケシスは振り返った。この国では見る事のない空色の髪と目が、陽光を弾いて明るく輝いている。
 ラケシスと同年代の見習い騎士、フィンである。シグルド、エルトシャンの共通の親友であるレンスター王子キュアンの従卒であった。先の戦いでラケシスの護衛を命じられて以来、何かとラケシスを気遣ってくれている。ノディオンにあるパラディン達に頼まれたところもあるようであったし、何よりこの若すぎる騎士は、主君の命を果たす事を第一に考えているようだった。
「別に何でもないわ。どうして?」
「ぼんやりされてましたよ」
「そんな事……」
 言いかけ、ラケシスは大きく息を吐いた。
「ごめんなさい。ちょっと考え事」
 フィンは少し笑顔を見せただけで、敢えて問おうとはしなかった。自分と彼との間にある年齢差は微々たるものであるはずなのだが、こんな風に微笑まれると、それは埋めようのない差のように感じられる。
 主君に命じられたとは言え、唯々諾々と安全な所にいるつもりはなかったのか、毎日パラディン達を相手に槍の稽古をしていたのを、ラケシスは知っていた。彼は受け身の人であるようだが、それは深い吸収力と包容力があってこそのものであると気づかざるを得ない。おそらく今も、ラケシスの『考え事』の内容を、察してくれたに違いなかった。
「少し外の空気を吸われては」
 フィンは窓の外に目を向けながら、そう提案した。
「籠もってばかりあられては身体にも毒です。ほら、ディアドラ様とセリス様も庭に出られてますよ」
 そこでようやく、ラケシスの耳にもはしゃぐ声が届いた。アグスティ城自慢の庭で日光浴を楽しんでいるらしく、やがてその中にシグルドの声も加わっていった。アグスティに来て以来シグルドは諸事に忙しく、外に出るのを殆ど見かけない。おそらく、自分がフィンから言われたのと似たり寄ったりの事を、誰かに進言されたのだろう。レンスター王家の面々も現れたのを見る辺り、エスリンあたりかも知れない。
「……家族団欒の邪魔はしたくないわね」
 聞こえなかったのか、フィンが僅かに首を傾げた。
「遠乗りに行きましょうか。フィン、一緒に来てくれる?」
「はい、喜んで」
 先刻と変わらない、にこやかな微笑みが返る。頷き返しながら、ふと思った。この人、私に逆らった事がないわ、と。
 彼は自分の家臣ではない。あくまでレンスター王家の騎士である。にも関わらず自分に尽くしてくれているのは、自分がノディオンの姫であるからだろうか。それとも、キュアンの命令が解かれないからなのだろうか。どちらにせよ、騎士としての立場と責任、矜持に基づいたものなのは確か。
 言い様のない不快感で、ラケシスは僅かに眉を曇らせた。

「ああ、いい天気」
 馬から下り、ラケシスは大きく伸びをした。ごく近くに馬を止めたフィンも、大きく息を吐く。
「綺麗な所ですね」
「昔よく、エルト兄様と一緒に来たのよ」
 ぎくっとした表情がフィンの顔に浮かんだが、ラケシスは気がつかなかった。すいと手を伸べて、遠く霞む城を指さす。
「見えるでしょう? あれがシルベール城。ノディオン王家の離宮だったのよ。夏にはよく避暑に来て……懐かしいわ」
 遠くを見つめるラケシスの目は、景色ではなく失われた過去を見ているようだった。それが、フィンには少し辛い。
「ラケシス様……」
 振り返ったラケシスは、フィンの何とも言い難い表情に気がついた。
「申し訳ありません。無神経なことを……」
 慌ててラケシスは首を振った。そういうつもりで出した話題ではなかったのだが。
「ごめんなさい、私こそ。ちょっと懐かしかっただけなのよ。本当に、それだけ」
 それでもまだ困ったようにフィンは立ち尽くしている。ラケシスも困ってしまって、再び視線を遠くに向けた。
「……お帰りに、なりたいでしょう」
「そうね……」
 フィンの言葉に、ラケシスは素直に頷いた。
 帰りたくないと言ったら嘘だ。好んでこの地にいるわけではない。好んで兄と離れたわけではないのだ。
 そう思ってから、ふとラケシスは気がついてフィンを見つめた。
「あなたは、帰りたいと思わないの?」
 突然の質問に、フィンは面食らったようであった。きょとんとしてラケシスを見つめる。その表情は、ラケシスが初めて見る、同年代の少年の顔であった。
「帰る、ですか」
「そう。レンスターに帰りたいとは思わないの?」
 やっと納得したように、フィンは軽く息を吐いた。いつも通りの笑顔を見せる。
「帰りたくないと言ったら嘘になりますが……今はキュアン様のお側にいるのが私の一番です。あの方の在る所こそが、私にとってのレンスターですから」
 その言葉に、ラケシスは目を瞬かせた。
「……ほんと、フィンはキュアン様が大事なのね」
「ええ。大切な主君です」
 誇らしそうに言うのを見ると、呆れるよりむしろ感心してしまう。兄の側にいた騎士達もそうであったが、やはり騎士とはそうあるべきなのだろうか。敬愛すべき主君に全てを捧げる。では兄は? 敬愛に値せぬ主君に忠誠を誓うのは、本当に騎士の道なのだろうか。
 黙り込んでしまったラケシスを、フィンは気遣わしげに見つめていた。フィンにしてみれば最初は扱いに困った同年代の姫が、最近は友好的に接してくれるので非常に嬉しかった。ラケシスは社交界に出られる歳ではなかったが、既に充分美しく、気性も素直で優しかった。戦乱などなければ立派な貴婦人になるに違いないと、心密かに思っているのである。自分にはない素直な(ともすれば子供っぽくもとれる)表情は、フィンにとって眩しいばかりだった。その人の側にいられて嬉しくない筈がない。しかし自分が外に連れ出したことで、その人が沈んでしまっている。元気づけようと思ったのに逆効果だったのだ。かなり心苦しい結果に、どう慰めたらよいものか、彼には見当がつかなかった。
 自分一人の思考を追っていたラケシスは、はたと我に返ってフィンを振り返った。
「フィン?」
「はい」
 ほっと息を吐き、ラケシスは小さく笑った。
「あんまり静かだから、帰ってしまったかと思ったわ」
 物静かな口調と表情で、フィンはやんわりと言った。
「姫をお一人で置くことはありません。望まれれば別ですが」
 生真面目な返答にラケシスは思わず笑い出した。
「ね、話を聞かせて」
「は?」
「レンスターの事。あなたの国はどんな所なの?」
 急な話題に戸惑いつつも、フィンは口を開いた。緑深きレンスター、荒野のトラキア半島にありながら、沃野に恵まれたレンスターを語った。自然と熱が入ってくる瞳を、ラケシスは興味深く見つめた。少しだけ年長の騎士が、いかに母国を愛しているのか、その声と瞳が語っているようだった。
 いつしか二人は肩を並べて腰を下ろし、遠くにシルベールを見ながら話し込んでいた。
「アグストリアと、少し似ているかも知れません。森が多く、山々もとても美しい」
「ふぅん……。お義姉さまもレンスターの方だったわ。お体が弱くてらっしゃって、今はアレスを連れてご実家に戻られているの」
 言って、ラケシスはくすくす笑った。
「アレスってお兄さまの子供なんだけれどね、お兄さまによく似ているのよ。やんちゃで手のかかる子だったけれど……もう大きくなっているでしょうね」
 フィンは黙ってそれを聞いている。話を聞きたいと言っておきながら……とラケシスは少々ばつが悪くなった。
「フィンの家族は? お父さまも騎士なの?」
 一瞬、フィンの顔が陰った。触れてはいけない話題だったと気づくのには、その一瞬で十分過ぎる程だった。
「……私は戦災孤児でした。生前の父は騎士でしたが……王家が拾ってくださらなかったら、私は街で頼る者もなく、のたれ死んでいたと思います」
 ラケシスはきゅっと両手を握りしめた。そうなのだ。戦争で悲しい思いをするのは、いつも民の側。起こすのはいつも王侯貴族だ。そして自分は、起こす側により近い。
 ラケシスの表情に気づいたのか、フィンはいつもの穏やかな笑みを見せた。
「お気になさらないで下さい。父は国を守って死んだのです。私はそれを誇りに思っているのですから」
 言葉もなく頷いたが、ラケシスは『気にしない』事はできないだろうと思った。これでアグストリアでフィンを死なせでもしたら……彼は喜んで死ぬだろう。キュアンの為に。だが今回、キュアンはレンスターの為に戦っているのではない。これはアグストリアの、ひいては自分の戦いだったのに。
「レンスターは」
 呟くように、フィンが言った。
「常に隣国トラキアの侵略に曝されています。物わかりの悪い隣国とのつきあいは、結構骨の折れるものですから」
 かなり遠回しではあったが、気にするなという意図はくみ取れた。他人事ではない、と言いたかったのだろう。自分を慰めようとしてくれるのが、嬉しかった。
「ありがとう、フィン」
 応えるような笑みが浮かび、だがそれは一瞬で消え去った。大きく見開いた青が刹那の間だけラケシスを映して、すぐさま後方に向けられた。
「どうしたの?」
「馬……」
 言いさして、フィンは立ち上がった。少し離れた所に置いていた馬を二頭、引いてくる。
「戻りましょう」
「え?」
 フィンはシルベールとは異なる方向に視線を向けた。オーガヒル? ……いや、今はアグストリア王シャガールのいる、マディノ城の方角だ。
「フィン」
 彼は答えなかった。切迫したものを感じ、ラケシスも思わず口を閉ざす。
「アグスティに戻ります。お急ぎを」
 頷いて馬に乗る。ラケシスが先に立って駆けた。
 フィンが見ていたのは、マディノだ。
 ラケシスはそう確信していた。フィンは何かを感じたのだ。それが何なのかは解らないが、おそらくは自分達の危機に直結するものを。
 まさか。
 シャガール王が出陣してきたのだろうか……アグスティを、取り戻しに? 馬鹿な! あと僅かの辛抱ではないか! それさえも耐えられぬと言うのだろうか。
 もしも、もしも自分の思っているとおりならば、また戦いになる。シグルドには負けてやる理由がない。今のマディノの兵力では、シグルド達には絶対に勝てない。兄のクロスナイツまでもが出てくるならば話は別だが……。それは僅かながらも行軍を共にした、ラケシスなりの判断だった。
 手綱を握りしめ、ラケシスはまっすぐにアグスティの城壁を見つめた。

 ラケシスの予感は的中していた。嬉しくもない事だったが。
「探したよ」
 城に戻ると、心配そうなシグルドが出迎えた。一緒にいたキュアンがフィンにきつい視線を向けたのを見、慌てて割り込む。
「私が頼んだのです。外の空気が吸いたくて」
「いえ、私がお連れしました」
 ラケシスはフィンを見上げた。押し止めようとしたが、フィンは頑として譲らなかった。自分の責だと言って、一歩も譲ろうとしないのである。
 キュアンは大きく息を吐き、その後ろでエスリンがくすくすと笑っていた。
「……もういい。これからは黙って出るな」
 フィンはキュアンに向かって深く頭を下げる。その様子を見て、シグルドが笑い混じりに言った。
「キュアンも心配していたんだよ。敵の進軍が伝えられたところだったからね。まぁ何にせよ、無事でよかった。すぐに出陣の準備をしてくれ」
 一礼して、フィンは踵を返した。ラケシスは声をかけたく思ったが、それを拒む雰囲気が肩と言わず背中と言わず流れていたので、果たせずに立ち尽くしてしまった。
「ラケシス王女」
 はっとして、ラケシスはシグルドを振り返った。
「フィンは何も悪くないのです。私につきあってくれただけで……」
「わかっている」
 シグルドは、彼らしい温かみのある笑みを浮かべ、ラケシスの肩を叩いた。
「こんな事で罰するつもりはないよ。彼は大切な主力の一人だ。ただ、彼自身が自分を許せずにいるなら、ある程度の罰は必要なのかも知れないが」
「シグルド様……」
 シグルドはキュアンと目を見交わし、互いに小さく苦笑した。
「悪い事にはならない。安心していなさい」
 その言葉を、ラケシスは全面的に信用する事にした。少なくとも、シグルドはそういう場面でつまらない慰めを言ったり、嘘で誤魔化したりする人物ではなかった。
「わかりました。では、私も出陣の準備をして参ります」
 はい? とその場の三人の表情が凍った。失礼します、と立ち去るラケシスを、呆然と見送る。
「……自分も戦う、と言ったのよね、今の」
「さすがエルトの妹。気が強いったらないな」
 うんうん、とキュアンが頷く。シグルドは応えず、しばらくラケシスの後ろ姿を見つめていた。それが見えなくなるのを待ったかのように口を開く。
「キュアン」
「ん?」
「フィンを借りられるだろうか。少し、頼みがあるんだが」
 レンスターの王子と妃は顔を見合わせ、珍しく考え深げにしている兄を見遣った。
「構わないが……何だ?」

 再びの後方待機を命じられ、さすがにフィンは驚きと落胆を隠せないようだった。
「ラケシス王女をこの城に置く。ディアドラやセリス、アルテナもだ」
 キュアンは真面目な顔で、若年の家臣を見遣った。震える手が、彼の心情を如実に表していた。
「お前一人だけではないが、その警護だ。やれるな?」
 フィンは頷かなかった。頷けなかったのかも知れない。
「ラケシス王女は戦いに出る事を望んでいる。だが相手はアグストリア軍。王女にとってはまさに母国との戦いになる。それだけは避けたいというのが、俺とシグルドの考えだ」
 彼は微動だにせず、主君の声だけを聞いているように見えた。
「お前の役目は警護だけではない。どうだ? やれるか?」
 時間をかけ、フィンは頷いた。改めて、キュアンの前に膝を折る。
「――主命とあらば、命を懸けて」
 その言葉に、キュアンは苦笑した。
「おいおい、こんな異境で死なせるために連れてきたんじゃないんだぞ。お前はレンスターの大切な騎士だ。勝手に死ぬのは許さない」
 フィンは真っ直ぐにキュアンを見上げた。頷くのを確認し、キュアンは立ち上がるように言った。
「シルベールの軍が動く様子はないが……どうなるか判らん。警戒を怠るな」
「はい」
 強く頷く。キュアンは晴れやかな笑みを向け、踵を返した。

 案の定、とでも言うのだろうか。マディノに駐留していたアグストリア軍はシグルド軍の前に敗北を喫した。と同時に、シャガール王がシルベールに逃げ込んだという情報も入ってきた。
「シグルドたち、勝ったんだね」
 無邪気に喜んでいるのはシャナンだけである。事態がますます悪い方向に進みつつあるのではないかという危惧が、誰の胸にもあった。
「シグルド様にお会いしたいわ」
 普段は無口なディアドラが、しょっちゅうそう零すようになった。離れているのが余程不安なのだろうとラケシスは思い、なるべく顔を出して話を聞くようにしていた。
「まだ戦闘が終結したわけではありません。危ないですよ」
「ええ……でも、一目で良いの。無事なお姿を見たいだけ」
 自分も兄の安否が気になる。もしもシャガール王が出陣を強制したら……そう思うと、矢も楯もたまらずシルベールに行きたくなってしまう。そんな具合であったから、ディアドラへの説得も、あまり実のこもったものではなかった。
 そしてもう一人、焦燥感に胸を焼いている人物がいた。
「キュアン様の所へ行きたいのでしょう?」
 はっとしてフィンは振り返った。噴水の影に、金色の輝きが見て取れる。
「ラケシス様……」
「私がキュアン様に頼んであげましょうか。護衛はいりませんって」
 ふる、とフィンは首を振った。悲しそうな笑みと一緒に。
「そのキュアン様がお命じになられたのです。果たせずに馳せ参じることはできません」
 やせ我慢、とラケシスは胸の中で毒づいた。ノディオンにいた時もそう。そんなに槍術の修練をしているくせに。やっている事と言っている事が、一致していないじゃない。
「ディアドラ様が、お茶でもどうですかって仰っていたわ。一休みしない?」
「任務中ですので」
 にべもなく断られ、ラケシスは少し膨れた。肩を並べて母国の話をしてくれた時は、あんなに近く感じられたのに。手を伸ばせば触れられるほどに近かった筈のフィンは、今やかなり遠くにいるようである。一線どころか壁さえ画しているようで、ラケシスは嫌だった。どうしてそうされるのかも判らなかったし、そうされる理由も思い当たらなかった。
 そんな事を考えている間に、フィンは上着を着直して立ち去ろうとしていた。慌てて呼び止めてから、ラケシスは戸惑った。何を言おうとしていたのか判らなくなったのである。
「本当に、いいの?」
 やっとの事でそう言うと、フィンはにこりとした。温かみの欠ける、柔らかいだけの笑みだった。
「主命を守るのが騎士です」
 さらりと言われ、ラケシスは反発を覚えた。
「ただ鵜呑みにするだけなら、誰でもできるんじゃなくて?」
 言ってから後悔したが、もう遅かった。フィンの唇が僅かに震え、彼の心が激しく傷ついたことを示した。しかし彼自身は何も言わず、槍を握りしめて一礼したに過ぎなかった。
「……失礼します」
 立ち去る彼の歩調には乱れがなく、それが余計にラケシスの胸に突き刺さった。

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