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その時、僕はあの景色を思い出していた
Dear home place


 大っ嫌いだった。
 飽かず振り続ける雪も、凍りつく風も……この国も。自分も何もかも、嫌だった。
 誰も助けてなどくれない。一人で生きるしか道の無かったオレにとって、シレジアという国の印象は、いいものではない。確かに生まれた国。確かに育った国。だが、だからと言って愛着を持たなければならないという道理もないと思うのだ。
 頼るものは自分一人だけ。
 だから妹がいると聞いたら、会いたくなった。自分のように辛い思いをしていたら、守ってやりたい。そんな風に、思ったのかも知れない。

 けれど、現実なんてもっとシビアなものなのだ。妹は、確かに辛い思いをしてはいたけれど、ひとりではなかった。支え合える従妹があり、守ってくれた従姉がいた。オレに会えて嬉しいと言ったけれど、実際会うまでは、オレの存在さえ知らなかった。
 ――オレは、何をやっているんだろう。

「バカね。そんなのいちいち考えていたら、そのうち禿げちゃうわよ」

 それを明るく笑い飛ばしたのは、勝手にオレを『相棒』に決めてくれた、天馬騎士。
「わたしだって、お兄ちゃんに会えるかどうかわからないし。……会って、喜んでくれるとも限らないしね」
 その言葉の裏に何があったのか、オレは随分後になってから知ったのだけれども。
 形ばかりでも、励まそうとしてくれるのは嬉しかった。ただ、オレはそれを受け止めて返せるだけ、素直ではなかったのだが。

「シレジアが好きかって? 当たり前じゃない。わたしが生まれた国だもの」

 彼女だって、少なからず辛い目に遭ったと聞いたのに、それでも好きだと笑う。どうしてなのだろう。
「辛いことばかりじゃなかったわ。アーサーは、シレジアで笑える思い出なんて、ないの?」
 笑える思い出。幸せだった頃の思い出。……ずっと、思い出さないようにしてきた事。
 オレはフィーと会って、それらを少しずつ、思い出すようになった。母さんがいて、父さんがいて、ティニーがいて。小さいけれど、ささやかだったけれど、幸せだったと言える幼い頃の自分。
 ……あの頃は、ちゃんと笑えた。

「もっと笑えばいいのに。そうしたら、きっと随分違うわよ」

 ――お前みたいに?

 オレの前にある扉が、フィーの手でいとも簡単に開いていく。重くて開かないなんて、喘いでいたのが嘘のように。
『ほら、こっち来なさいよ』
 そう言って手を差し伸べられている気がする。その手を取れば、きっとオレは変わるんだろうと、そう思った。
 肩越しに見える景色は、雪野原。
 あんなに嫌っていた、シレジアの冬。

「フィー、この戦争が終わったら、シレジアに帰って一緒に暮らそう」

 君が見せてくれた景色の分、今度はオレが、君に見せよう。
 オレが思いだした、一番の幸せの光景。
 それを、君に見せてあげる。


update:2001.04.30/written by Onino Misumi

Background:Angelic

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